入居者の代弁者。明日も笑ってもらえるように、決めつけない介護を。

入居者の代弁者。明日も笑ってもらえるように、決めつけない介護を。

特別養護老人ホームである『社会福祉法人桐仁会 かしわ園』。今入居されているお年寄りの方々は、様々な人生を経て、たまたま認知症や重度化などの理由で在宅が困難になっただけ。その方ごとに今までの暮らし方があります。そんな入居者の方が今までお家で暮らしていた時と同じような生活ができるよう、「暮らしの継続」で豊かな暮らしを目指しています。

『かしわ園』で入社3年目の冬、ユニットリーダーになった介護福祉士の細川さんの仕事観を今回ご紹介します。

看護師から介護士へ、夢が変わったある出来事

▲手作りの駄菓子屋さん。入居者の方が楽しめる施設づくりが徹底されています。

細川さんが働いている『かしわ園』では、【入居者の方のお宅にお邪魔している】というコンセプトのもと、時計や絵の高さ、家具の配置、照明の位置に至るまで、施設全体が入居者目線で使いやすいように作られています。働くスタッフの方は【お邪魔しているお客様】として、業務中はスリッパでケアをするほど、徹底した世界観とおしゃれな施設装飾が魅力です。細川さんが『かしわ園』を選んだのは、学生時代から持っている介護に対する、ある思いからでした。

細川「母が看護師だったので、人と接することができる看護師になることが小さい頃からの夢でした。高校生になるまでは看護師になろうと思っていたんです。

進路を決める際に、近くにあった老人施設のボランティアに参加して、看護師のお仕事を見せていただいたのですが、治療やリハビリが中心でした。その近くで、介護士の方がレクリエーションや一人ひとりに合わせたお食事など工夫されている姿を見て、その方の暮らしが楽しくなって、笑顔を作ることができる介護の仕事がとても魅力的だと思いました」

当時、アルバイトをしていたファストフード店でも、認知症とみられるリピーターのお年寄りの方が困っている際にお手伝いしたことがありました。ただ困っていたから助けただけなのに「ありがとう」という言葉をもらい、感謝されることに改めて喜びを感じたと言います。

その際には介護に関する知識はなかったものの、さまざまなきっかけが重なり、本格的に介護の道へ進むことを決心。職種を調べていく中で介護福祉士にたどり着き、介護系の専門学校へ進学します。

進学して目指すようになったのは【接する方の代弁者になること】でした。

学生時代に目指した介護感が叶う、かしわ園との出会い

▲施設内にはおしゃれなカフェスペースも。デザートを楽しむ入居者の方が沢山います。

学生時代に参加した介護実習では、50名近くの入居者の方をまとめて見る従来型の介護で、転倒のリスク軽減のための離席センサーや身体拘束がなくてはならないものでした。

さまざまな機器の必要性、根拠はもちろん理解しているけれど、何か理由があって行動を起こそうとしているとしたら、それをくみ取ることこそが彼女が目指す【接した方の代弁者になること】だと改めて意識します。

細川「就職先を探しているときに、先生から勧められたのがユニット式の施設でした。その時初めてユニット式の介護施設を知り、私が目指す介護感に近いと思い、かしわ園を選んだんです。

見学した際に、時計や絵の高さが低くて不思議だなって思っていたら『車いすに座っていたら、高い位置の時計って見えにくいでしょ』って入居者の方目線の施設づくりが全体的にされていて、ニーズをくみ取ろうとする施設ということに衝撃を受けました」

入社後、まず最初に任せられたのは、入居者の方とのコミュニケーション。2日にわたり今後自分が担当するユニットの方の名前や料理の切り方はもちろん、どんな場所が好きか、どんな歌手が好きかなどを知ることにより、より元の生活に近い介護をするためです。今では忙しく、2日間もその時間を取ることができないからこそ、大切な時間でした。その際、先輩からの言葉に、自分の職業の重さも実感させられます。

細川「最初の頃は何をしたらいいかもわからないので、ただただ笑顔になってほしいという意識で接していました。ただ、先輩に言われたのは『もしかしたら今話しているのが、その方と接する最後かもしれない。明日明後日にはいないかもしれない、と常に覚悟を持って働いてほしい』という言葉です。高齢の方と接するからこそ、楽しいだけでななく、後悔のないケアをプロとして提供することを意識させられました」

入居者の方の気持ちに寄り添う介護感は、施設内でも高い評価を受けました。

入社してから3年目の冬、細川さんはユニットリーダーになります。平均よりも早めの昇級。彼女が評価されている理由の一つに、【笑顔】が挙げられます。

細川「かしわ園の介護方針に【笑顔】と【自分がされて嫌なことをしない】というものがあるんです。私はお給料の半分は笑顔だと思っていて、プロの介護士としての表情だと思います。知識や技術はまだまだ勉強していかなければならないと思っていますが、入居者の方を第一に考えられることや接し方を評価していただけたのかなと思います」

決めつけをしない。諦めなかったから得られたやりがい

▲「明日が楽しみ」と言っていただけたときの喜びはひとしお。

働く環境で日々感じるのは、法人全体として介護方針からだれもブレることなく、同じ意識で同じ方向を見ていることです。その意識付けは入社時の研修中だけではなく、毎月開催される勉強会にあると言います。

細川「法人として目指すものがしっかりを決められているので、同じ方向性を見る職員しかいません。勉強会では確認しあいながら日々の方向性を決めて、業務に反映しています。和気あいあいとした雰囲気ではあるものの、お互いに指摘しあい、高めあいながら働けていると感じますね」

介護に正解はない。形に残るものでもない。だからこそ、お互いに意見を言い合い、評価しあい、知識の共有をして、『かしわ園』という1つのチームとして支えあえています。個人の狭い視野で入居者の方のできることをつぶさないケアこそ、職員たちが求め、高めあえている理由と言えるでしょう。

質の高いケアが求められる一方、自分の知識や実力不足を痛感することもありますが、それ以上に楽しいと思えることや、やりがいが沢山あります。

細川「やりがいに感じることは数えきれないほどあるんですけど、その中でも印象的な出来事がありました。

川崎大師にみんなでドライブに行ったとき、私が良く接しているユニットの方がひとり別の車だったんです。車から降りた時にはここがどこなのか、なんで連れてこられたのかも分からず不安そうで…。そのときに私を見つけてくれて『よかった、いてくれた!』って満面の笑みで言ってくれたんです。

きっとその方は、私が誰なのか、どういう関係性かまでは分からないかもしれないけど、いつも近くにいてくれた人・いつも見てくれてた人って思ってくれたんじゃないかなって。

『認知症だから、どうせ忘れてしまう』って決めつけはできないなって感じた瞬間でもあり、働いていてよかった、がんばろうって思えた経験でした」

認知症の方の記憶の保持は、なかなか難しく、職員の名前や顔も覚えてもらうことが難しいといいます。そんななか、自分の行動に対して笑顔になってもらえたり、この施設に入って、「こんなことができるようになって嬉しい」「明日が楽しみ」といってもらえることが大切で幸せに感じています。

ビジョンはブレず、誰かに伝えていく側になりたい

▲成長は止めない。これからも後悔のないケアを。

東京都が定める厚労省推進のユニットリーダー研修実地研修施設に選ばれている『かしわ園』ですが、細川さんは今後の成長のため、他県の実地研修を受けることを考えています。

具体的には座学3日、実地研修が4日あり、ユニットケアをするための施設や取り組みをどのように作り上げ、24時間シートやシフトなどの活用方法などを見学するとのこと。あえて他の施設を見ることで、さらに上を目指していきます。また、施設内でも成長できる環境はあると言います。

細川「上司との意見交換が頻繁にできていると思います。自分にできることは何か、足りていない部分はないか、今のケアよりもっといい方法があるんじゃないかを模索して、相談していくことがステップアップにつながると感じています。

仙台の研修では、より良いケアを提供するために、先々を見据えて他の施設の良いところを取り入れていきたいですね」

まだまだ成長できる環境に期待しつつ、今後の目標や夢についてはこう語る。

細川「介護福祉士になる夢はかないました。だから、これ以上の夢は思いつきません。

今大切にしているビジョンはブレずに、今後は今まで経験したことを誰かに伝える側になっていくので、新人育成に生かしていきたいです。

でも、ユニットで働くことにやりがいを感じているから、これ以上偉くなりたいとは思わないかな。現状維持で、今まで通り入居者の方たちがやりたいことを手伝えるように、東京都主催のものや外部の研修に参加して、専門的な知識を増やしたいです」

介護福祉士という職業を知ったあの日から、彼女が目指す【接する方の代弁者になること】というビジョンは変わりません。入居者の方々の笑顔のために、「やりたい」をかなえるために、明日が来ること楽しみに思ってもらえるように、これからも持ち前の明るさと貪欲さを発揮していきます。

社会福祉法人桐仁会 かしわ園: http://www.tojinkai.or.jp/

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