世界各国の旅人が集まるホステルを運営する株式会社ティーエーティー。高級ホテルとは違い、共用スペースを多くとるホステルで、普通の観光旅行では決して味わえない特別な旅の体験をしていただくことを目指しています。一期一会の出会いを大切にする方、新しい体験を求めて旅する方の思い出のピース(一片)になれたらとの思いから、2019年6月現在3つのホステルを運営しています。働く方にとっても一人一人が大切なピースであることを感じられる企業づくりをしている同社で、今回は取締役の加藤有佳子さんに各ホステルの魅力や、様々な方へ対する思いを語っていただきました。
おもしろくて満足度の高いものを追求したホステル

2019年6月現在京都にて、【ピースホステル京都】【ピースホステル三条】【22 PIECES】の3拠点を運営している株式会社ティーエーティー。trip advisorやagoda.comなどでは高い評価を受け、なかには2013年度のグッドデザイン賞に選ばれているホステルもあります。
元々は不動産事業を行っていた同社。代表取締役 田畑伸幸社長は海外からの観光客の方がバックパックを背負っている強い印象から、宿泊施設に興味を持ったのだそう。立ち上げ当初から携わっている加藤さんも同社のホステルに強い思い入れがあります。
加藤「私たちが運営しているホステルはホテルユーザーでもバックパッカーでも楽しめる、中間層をターゲットにした空間づくりをしたら面白いんじゃないかという気づきからプロジェクトの立ち上げに至りました。
プロジェクトを立ち上げてから形にするまでに、1店舗目は特に時間がかかりましたね。土地探しから始めて、面白い空間ができるかどうか?を考えて精査していって、ご縁のある土地に巡り合うまでが大変でした。どのホステルもアクセスの良さはもちろんですが、同じブランドであっても全く違うコンセプトで空間を作っています」
運営しているのはビジネスホテルではなくホステル。様々な国籍の方が共用スペースでコミュニケーションを取りあうことができます。せっかく新しいものを作るなら、まったく同じものではなく「もっともっと面白いもの」「もっともっと満足度が高いもの」を追求したいと個性が光る空間づくりをされています。
加藤「1店舗目の【ピースホステル京都】は一番アットホームな雰囲気。共有スペースの中にフロントがあるので、フロントスタッフとゲストの距離が近いことが魅力です。
2店舗目の【ピースホステル三条】は古い旅館をリノベーションして、よりスタイリッシュでクールな雰囲気、3店舗目の【22 PIECES】は空間構成がホテルライクな仕様になっていて、でもホステルらしいゲストに近いサービスをするために販売促進しています。
2019年10月には4つ目の店舗もオープンするので、そこに向けての準備も行っているところです」
お客様に喜ばれるものを。ボトムアップが当たり前の環境

利用者は外国籍の方が8割以上、幅広い年齢層に支持を受けている。スタッフの方は日本以外に台湾・中国・韓国出身の方などが在籍され、さまざまな文化の方に対応できるようになっています。加藤さん自身も学生時代8年間の留学経験があり、語学力を活かしたいという思いや一緒に面白いことができそうだという期待感から入社したそう。
加藤「働いている方は 海外に関心があったり、留学経験がある方、帰国子女の方など海外の方とコミュニケーションを取りたいという方が多いですね。コミュニケーションレベルの英語が話せたり、他の言語も生かしたい方が活躍されています。
語学力を活かせるインターナショナルな環境やチャレンジングな社内風土は皆さん魅力に感じていますよ」
チャレンジングな風土という点で特に注目したいのは、スタッフ発案のイベントが店舗ごとに毎月行われていること。お客様にどうしたら喜んでもらえるかを日々追及していて、過去にはたこ焼きや流しそうめんに餅つき、サイクリングツアーやライブイベントなど様々な催し物を実施してきました。
加藤「イベントの発案から実施までは、方向性が間違っていないかや予算感はどうかなどを話し合い、実現可能そうであればすぐに実行に移します。業務改善に関しても同様ですね。発案から検討してみんなで形にしていこうという動きは早いと思います。
トップダウンよりはボトムアップが多い環境だと思いますね。役員の一存で決めたことを下ろされるよりも、自発的に動いていただく方が多いと思います」
その他にも、スタッフの方にはフロントだけでなく、幅広い業務に携わってもらうために定期的にバーオーナーの方に来訪していただき、より本格的なカクテルが出せるように研修を行っています。どのようにしたらお客様に喜んでいただけるかという観点から、運営に関わる全ての業務を満遍なくできるようにしています。
日本と世界の架け橋に。宿泊施設にしかできないコミュニケーションとチームワーク

台湾でアメリカンスクールに通っていた加藤さんの経験が活かせているのは、やはり語学力とコミュニケーションの取り方。アジア圏のお客様が多い同社では、例えば中国語でコミュニケーションを取ることで安心感を与えることができるのだといいます。相手の文化を知っているからこそできることは沢山あるのだとか。
そうした異文化の方と接した中でも特に印象に残っているエピソードがありました。
加藤「フロントに入っていた時に初めて日本にいらしたお客様との出来事が印象に残っていますね。日本とはあまり関係が良くない国の方だったのですが、日本に来る前に周囲の方から『日本は良くないところだ』『嫌悪されるよ』などと沢山お聞きになって、固定概念の強い方の影響を受けたまま来日されたそうです。
そんな中ピースホステルに宿泊されて、それまで言われていた情報とは全く違うということが分かって、帰国されてから日本に来たことが無い方にも『悪い所じゃないよ』と伝えていきたいとメールを頂きました。単に接客するだけでなく、日本の印象を変えることができたことが嬉しいですよね」
ほんの少しの気遣いが国と国をつなぐ架け橋になることもある。接してみて初めて分かることがあるのだと双方が感じられた瞬間でした。
また、お客様のご要望から、プロポーズのお手伝いをしたり、誕生日や記念日のお祝いをすることもあるのだそう。事前に記念日が分かっていればバルーンの装飾やタオルで作った鶴、ローズの花びらを散らして飾るなど希望に沿う形のサービスを出来る限り実現しているのだといいます。
加藤「スタッフはお客様に喜んでもらいたいという思いが強い方ばかり。こうしたら喜んでいただけるんじゃないかというスタッフのアイディアをみんなで形にしていきます。
反対に、ミスやクレームを起こしてしまった時にはみんなで協力し合って、チェックアウトされるときには笑顔で『さようなら』が言えるようにカバーし合ってコミュニケーションを取っています。しっかりと引継ぎもされているのでチームワークの良さが感じられますね」
経営ボードの売り上げや知名度に関することだけでなく、こうしたチームワークの良さやスタッフが楽しく働いている姿を見ることが、加藤さんのやりがいに繋がっているのだといいます。
働く方は大切なピース。現場の声を活かす、スタッフ発案の福利厚生

働いているスタッフに対して「人生一度きりなので、自分らしく楽しく働いてほしい」という思いを持っている加藤さん。みんなが幸せで、より多くの方に幸せだと感じてもらえたらと語りました。
同社で楽しく働く為に取り入れた福利厚生の中には、なんとスタッフの発案から導入されたものがいくつもあるのだそう。
加藤「スタッフの声から導入されたのは1カ月休暇制度。海外から日本に来て働いている方や留学経験のある方、海外に興味のある方が多い同社では、しっかり働くことももちろんですが、その分リフレッシュして欲しいとの思いもあり導入しました。
その他には、よりアクティブになれるように初めて経験するものに使える手当を支給しています。カフェやバー、ものづくり体験、ゲストに質問されて答えられなかったスポットなど幅広く利用しています」
自身の勉強のために刺激を受けらえるホテルやホステルに泊まってほしいとの思いから宿泊支援制度、語学以外で仕事に生かせる講習・資格取得に対する支援制度なども取り入れられています。衛生管理者や防火管理者資格、AEDの講習などの知識や実績のあるメンバーが増えることで、より安全なホステルにしていけるという思いから取り入れているのだといいます。
加藤さんは1店舗目ではフロントに入りマネジメント全般を行い、運営するホステルの基礎やルール作りをされてきました。発展途上の小さな規模感だからこそ、より働く方の意見に耳を傾けられるのだと感じられます。これから店舗が増えていくにあたり、スタッフ間のコミュニケーションが課題になるだろうと感じる一方で、フランクに接することができる社内環境の良さや働く方がやりがいを持てていることが定着の理由。これだけ刺激を受けられる環境なら、心配はなさそうだ。
加藤「現在3、4店舗のオープンを計画していますし、今後も店舗展開を続けていきたいですね。知名度を上げていくことはなかなか難しい部分ではありますが、各予約サイトのレビューに真剣に向き合うことで評価されていることもあると思うので、その点が他社と比べても選ばれている理由だと思います。今ある店舗にはより本格的なカフェ・バーを展開していきたいです。
それぞれの個性を尊重できる環境なので、インターナショナルに働きたい方には活躍していただける環境だと思います」
株式会社ティーエーティー:https://www.tat-group.co.jp/